陰謀論の定義と分類:最新の学術的知見
Brothertonの5要素定義からBarkunの3類型まで、陰謀論研究の基礎的概念を整理する
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「陰謀論」をどう定義するか
「陰謀論」という言葉は日常的に使われるが、学術的な定義は論争的である。現在最も参照される定義の一つが、**Rob Brotherton(2015)**による5要素モデルである。
Brothertonによれば、陰謀論は以下の5つの要素を持つ:
- 少数の強力なアクターによる陰謀
- 重大な社会的影響を持つ
- 秘密裏に行われている
- 悪意ある意図を持つ
- 公式の説明とは異なる
重要な留意点として、「現実の陰謀」は存在する。ウォーターゲート事件、タバコ産業による健康被害隠蔽、CIA のMKウルトラ計画など、後に証拠で裏付けられた陰謀は歴史上多数ある。問題は内容そのものではなく、推論の構造にある。「反証可能かどうか」が、健全な懐疑心と陰謀論的思考を分かつ鍵である。
Barkunの3類型(2003)
政治学者マイケル・バークンは、陰謀論をスケールによって3つに分類した。この分類は現在も最も広く参照される。
| 類型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| Event conspiracy | 特定の出来事を説明する | 9.11陰謀論、JFK暗殺説 |
| Systemic conspiracy | 組織・集団が社会を支配しようとしている | ディープステート、フリーメイソン |
| Superconspiracy | 複数の陰謀が統合された超巨大な支配体制 | QAnon、新世界秩序 |
スケールが大きくなるほど反証不可能性が高まるという特徴がある。Superconspiracy では、反証証拠すら「陰謀の一部」として吸収されてしまう。
外形的な分類軸
陰謀論はスケール以外にも複数の軸で分類できる。
- 告発関係(Uscinski & Parent 2014):誰が誰を告発するか
- 公式性(Coady 2006):公式説明に対立するか否か
- 物語テンプレート:偽旗型・隠蔽型・黒幕型・浸透型・捏造型・黙示録型
- 政治的指向:左翼ポピュリスト型・右翼ポピュリスト型・横断型
- 時制:過去指向・現在進行・未来警告
- 認識論的構造(Keeley 1999):反証可能か・自己封鎖的か
- モノロジー(Wood et al. 2012):単独か世界観パッケージか
これら複数の軸を組み合わせることで、任意の陰謀論を外形的に位置づけることができる。
参考文献
- Barkun, M. (2003). A culture of conspiracy. University of California Press.
- Brotherton, R. (2015). Suspicious minds. Bloomsbury Sigma.
- Coady, D. (2006). Conspiracy theories: The philosophical debate. Ashgate.
- Keeley, B. (1999). Of conspiracy theories. Journal of Philosophy, 96(3), 109–126.
- Uscinski, J. E., & Parent, J. M. (2014). American conspiracy theories. Oxford University Press.
- Wood, M. J., Douglas, K. M., & Sutton, R. M. (2012). Dead and alive: Beliefs in contradictory conspiracy theories. Social Psychological and Personality Science, 3(6), 767–773.